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ダイナミックプライシングとは?メリットや導入ポイントを全て徹底解説

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ダイナミックプライシングは特に新しいコンセプトではありません。数十年もの間、消費者は航空チケット、旅行やホスピタリティなどの業界で、需要主導型の価格変動に慣れ親しんでいます。また、近年では、ライドシェアサービスなどの登場により、「サージプライシング」が話題になっています。小売業でも毎日(あるいは毎時間)値上げと値下げが繰り返されており、消費者がオンラインショッピングのカート上で商品やサービスの価格変動を目にすることもよくあります。また、ダイナミックプライシングはライドシェアサービスや小売業だけに限らず、宿泊施設や航空業界でも導入されています。

この記事では、ダイナミックプライシングとは?Dynamic Pricing のメリットやデメリット、導入方法のポイントなどを紹介しています。

ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシング(Dynamic Pricing)とは、企業が消費者の需要と供給をベースにサービスや商品の価格を調整する一種の価格戦略です。

ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングでは、目下の市場動向に基づいて商品やサービスの価格を柔軟に設定するものです。ブランドが展開できる数多くの価格戦略のひとつとして、多くの企業で導入されています。また、ダイナミックプライシングに含まれる戦術には、以下が含まれます。

  • 競合価格設定
  • スキミングプラシング(上層吸収価格)
  • マークダウン(値下げ)
  • ペネトレーションプライシング(市場浸透価格)
  • バリアブルプライシング
  • バンドリング

こうした手法は企業で広く使われていますが、ダイナミックプライシングは、リアルタイムデータに基づき調整され、需要や関心の高い商品の価格を維持し、収益を飛躍的に増加させるため、特に効果的な価格戦略として注目されています。

ダイナミックプライシングの仕組み

小売業にとってのダイナミックプライシングとは、いくつかの中核要素に基づいた価格戦略であり、継続的にモニターし、現在の市場状況を的確に反映するよう調整する必要があります。ダイナミックプライシングを有効にするメカニズムにおいて、いくつかの重要な役割を果たす要素があります。

商品属性

商品価値を定義する特徴を理解することは極めて重要です。品質、ブランド、希少性、さらには商品が陳腐化するスピードなど、具体的な要素がすべて価格変動に影響します。商品の独自性、あるいは季節性やイベントなどが、価格弾力性に大きな影響を与える可能性があります。例えば、限定品(米国スーパーボウル優勝記念Tシャツのような)は、その特別さから高値で取引されるかもしれません。また、リサイクル素材を使ったサステナブル商品も高値で取引される可能性を持っています。

財務データ

情報に基づいた価格決定を行う小売業は、財務デー タの海を航海する必要があります。これには、売上原価(COGS)、オペレーション経費、適切な利益率などが含まれます。競争力を維持しながら収益性を確保するために、これらの財務データを十分に考慮し、価格戦略を展開することが求められます。財務業績指標に対応してリアルタイムで価格を調整することで、企業は確実な財務目標の達成が可能となります。

在庫状況

在庫水準は価格調整のバロメーターです。特定の商品の在庫レベルが高ければ、売れ行きを加速させ、保管スペースを確保するために価格を下げるきっかけになるかもしれません。在庫水準が低い場合、特に需要のある商品については、値上げの機会となります。在庫過多は利益を圧迫し、在庫切れは売上機会を失うことになります。

季節性と時期

小売企業は、価格戦略に劇的な影響を与える季節性の波に直面しています。季節性のある需要、在庫一掃のサイクル、さらには年中行事によって、価格調整のタイミングやレベルが左右されることがあります。例えば、冬物のコートは、寒い時期には高めに設定され、シーズン終了後は春期の在庫を確保するために値引きされる可能性が高いです。

地域別動向

価格設定には地理的なニュアンスが大きく影響します。ある地域では割高で売れている商品でも、別の地域では異なる需要、経済状況、購買力があるため、異なる価格設定が必要になります。ダイナミックプライシングにより、小売企業は地域レベルで価格を調整し、売上と利益を最適化することができます。

競合他社の価格設定

小売業界では、価格は単独で決められるものではありません。競合他社の価格戦略は、極めて重要なベンチマークです。競合状況を継続的にモニターすることで、小売企業は自社の価格設定が市場の期待に沿っていることを確認できます。競合他社が類似商品の価格を引き下げた場合、マーケットポジションを維持するため、価格調整で対応する必要があるかもしれません。

つまり、ダイナミックプライシングは、刻々と変化する海を航海する船の舵取りに似ています。小売企業は、さまざまな市場の変動要因という広大な情勢を操りながら、商品属性の風、財務データの潮流、在庫レベルの波に応じて、帆(価格)を調整しなければいけません。このアプローチには、分析に重点を置き、変化へ俊敏に対応するための自動化されたプロセスが必要です。

ダイナミックプライシングのメリット

ダイナミックプライシングの採用・導入には、収益の増大につながる様々なメリットがあります。

価格の管理強化: ダイナミックプライシングにより、企業は価格をより正確に微調整し、利益率を守りながら競争力を確保することが可能です。

ブランド価値の管理徹底: ブランドの価値を損なうことなく、市場状況を反映した価格調整を実行します。

持続可能な収益性: ダイナミックプライシングを活用し、長期的な財務上の健全性と成長を支える価格設定のエコシステムを構築します。

需要を喚起: 価格戦略によって、売れ行きの鈍い在庫の魅力と動きを高めます。

市場への迅速な適応: ダイナミックプライシングは、市場変動へ迅速に対応し、競合他社動向との連動、競合他社よりも一歩先を行くことに貢献します。

戦略的な競争優位性: 市場動向や競合他社の価格設定、値引き戦略の把握によって、市場における戦略的な優位性の確保を実現します。

価格設定業務の最適化: ダイナミックプライシングソフトウェアにより、小売業の価格決定を自動化・最適化し、煩雑なマニュアル作業を最小化します。

データに基づいた価格最適化: 高度なアナリティクスとAIを駆使した価格設定により、多様な影響要因を自動的に考慮し、より精度の高い価格設定のための意思決定を促進します。

在庫回転率を最適化: ダイナミックプライシング戦略を活用し、終売の商品在庫の整理をタイムリーに支援、陳腐化や評価損のリスクを低減します。

企業側だけのメリット以外にも、消費者側のメリットも多様に存在し、例えば普段よりお得な価格で商品やサービスを購入することができるメリットが存在します。

ダイナミックプライシングのデメリットとは?

ダイナミックプライシングは大きな収益を生み出す可能性を秘めている一方で、リスクも存在します。リスクを十分に意識し、ブランドの評判や顧客ロイヤルティが損なわれないよう、対策を講じることが重要です 。

第一に、価格の絶え間ない変動が、予測不可能さと気まぐれな印象を作り出し、顧客満足度そのものを試すことになるかもしれません。価格を下げると、さらなる割引価格があるかもしれないと、顧客が購入をためらうリスクにつながります。これは双方向に働く可能性があり、値上げが起こる前に顧客がチェックアウトする傾向が強くなる可能性を高めます。

この価格戦略の成功は、正確かつ質の高いデータを利用できるかどうかにかかっています。精度の高いプライシングインテリジェンスのサポートなしにダイナミックプライシングを開始しないことが重要です。AI技術の登場により、この種の価格最適化が実現可能になりました。そして、テクノロジーによって価格設定への対応が容易になった一方で、倫理的な考慮が求められます。ダイナミックプライシングに踏み出す企業は、悪天候やその他の局地的な危機の際に、日和見的と受け取られるような方法で市場変動を利用しないよう注意する必要があります。

ダイナミックプライシングモデルの導入方法

予測価格設定ソリューションへの投資は、ダイナミックプライシングを活用するための第一歩といえますが、すべてのソリューションが同じようにデザインされているわけではありません。例えば、ルールベースの価格設定ソリューションでは、店舗の改装や特定のイベント、保管容量などのビジネス上の制約を考慮することができません。AIプライシングに投資する際は、これらの制約に対応可能かどうかを確認する必要があります。

ビジネス目標の決定: ダイナミックプライシングのアプローチを企業全体のビジネス戦略と連動させ、チームが明確なゴールを設定・測定できるように、システムは主要なビジネス指標を最適化できる必要があります。

競合他社の価格を追跡: 市場における競合他社の価格設定に基づいたシステムによる価格設定の最適化ができるかどうかが、競争力を維持するための重要なカギです。

透明性のある価格変更の自動化: ほとんどのソリューションでは、価格提案の透明性が確保されておらず、ユーザーが予測結果を比較することもできません。ソリューションには、意思決定を支援する価格提案機能が求められます。

ダイナミックプライシング戦略のテストと信頼: AIを完全に信用するのは難しいこともあります。関係者がルールを超える必要のある例外に集中し、包括的なビジネス目標を達成するため、価格設定の最適化のワークフローを自動化するソリューションが重要です。

マッキンゼーの「ダイナミックプライシング: 化学品業界におけるデジタルとアナリティクスの活用、バリューベースプライシング(原題:Dynamic pricing: Using digital and analytics to take value pricing in the chemical industry to the next level)」記事では、ダイナミックプライシング導入の成功と、その効果の持続には、適切なITとアナリティクスインフラ、そしてパフォーマンス管理能力が不可欠であると記載されています。データによるサポートがなければ、企業がダイナミックプライシングを情報に基づいて効果的に実践するのは難しいでしょう。

ダイナミックプライシングは価格最適化に役立つ

ダイナミックプライシングは価格最適化において極めて重要なツールです。小売企業は初期価格設定から値引き、プロモーションまで、商品のライフサイクルの様々な段階において価格戦略を洗練させていくことができます。リアルタイムのデータ分析を活用し、価格を正確に調整、消費者にとって魅力的な価格を維持しながら、利益率を守る(さらには高める)ことが可能です。この戦略は、購買パターンや価格感度といった顧客属性への深い理解と組み合わせることで、特に効果を発揮します。より深いプライシングインテリジェンスにより、小売企業は市場状況だけでなく、さまざまな消費者層の嗜好や消費行動に合わせて価格を調整しながら、収益の最大化、顧客満足度の維持を推進します。

ダイナミックプライシングは、小売業にとって、最も需要の高い商品の利益率を増大すると同時に、より効率的な値引きによって、低迷している売上を回復する機会も提供します。ただし、ダイナミックプライシングは、正確なリアルタイムデータと強力なAI機能、そして価格変更のトリガーと実行を自動化するシステム次第の面も持ち合わせています。

バリアブルプライシングとダイナミックプライシングの違い

バリアブルプライシングは、しばしばダイナミックプライシングと混同されます。どちらも価格戦略の有益な一角をなしますが、両者の違いの理解は、特定の市場における最適な選択への判断につながります。ダイナミックプライシングと異なり、バリアブルプライシングは市場の需要に応じた価格設定の変更という、より静的なアプローチです。瞬時に変化するのではなく、需要パターンの出現と後退に合わせて時間をかけて調整されます。例えば、小売企業は、過去の需要データに基づき、同じ商品でも季節性、曜日によって異なる価格帯を設定します。このような調整は、消費者の関心や支払い意欲の変化を予測した、事前に計画されたものとなります。

一方でダイナミックプライシングは、市場の状況に即座に対応して価格を調整するリアルタイム戦略です。競合他社の価格変動、需要と供給の変化、突発的な市場動向などが含まれます。小売企業が市場の動きに即座に対応できるようにする、機動的かつ積極的な価格戦略です。競合他社が不意に価格を引き下げたり、不測の事態によって需要が急増したりした場合、ダイナミックプライシングによって小売企業はその場で価格を調整し、状況を有効的に活かし、リスクを軽減することが可能です。2つのプライシング戦略の大きな違いは、価格変更のスピードとトリガーにあります。バリアブルプライシングは、予測された需要に合わせて動くのに対し、ダイナミックプライシングは、市場の生のリズムに合わせて動きます。

需要の価格弾力性とは何か

需要の価格弾力性とは、ある商品やサービスの需要量が、その価格の変化に対してどのように変化するかの度合いを測定するために、小売業で使用される指標です。この計算式は、消費者の購買行動の反応性、つまり弾力性を定量化するもので、価格の上昇や下降に基づいて、消費者がより多くの、あるいはより少ない商品・サービスを購入するようになるかが測定されます。需要の価格弾力性の数値は、次のような計算式で表されます。

需要の価格弾力性(PED)=需要量の変化率/価格の変化率

実際的な話としては、以下の結果になります。

PEDが1より大きい場合、需要は弾力的であると判断され、これは需要量が価格よりも大きな割合で変化することを意味します。このシナリオでは、消費者は価格の変化にかなり敏感であると言えます。

しかし、PEDが1未満の場合、需要の弾力性は低く、需要量は価格よりも小さな割合で変化し、消費者は価格変化にそれほど反応しないということになります。

PEDが1に等しい場合、需要は単位弾力的です。需要量の変化率は、価格の変化率と全く同じです。

この弾力性の数値で測定される価格感応度は、価格変更によって販売数量が変化する可能性を示すため、小売企業にとって極めて重要です。例えば、ある商品の価格弾力性が高いことを小売企業が把握している場合、価格を少し下げただけで、販売量が大幅に増加し、全体的な収益が増加する可能性があります。逆に、需要の弾力性が小さい商品の場合、販売数量を大幅に減らすことなく価格を上げることができ、これも収益の増加につながる可能性があります。

このコンセプトを基に、小売企業は価格戦略、販売促進、在庫管理について十分な情報に基づいた意思決定を行い、消費者動向と市場の実態に即した価格設定の推進が可能です。

価格設定が需要に与える影響

ダイナミックプライシングは、数値のみならず、消費者行動も重視しています。売れ行きの鈍い商品の価格を少しでも調整し、需要を刺激することによって、商品が棚に滞留しないようにします。しかし、望ましい効果をもたらすのは、単に価格を下げることだけではありません。

より高い価格の設定が、より高い価値の認識を形作ることもあります。Rafi Mohammed氏は、ハーバード・ビジネス・レビューの「ダイナミックプライシングで失敗しないための7つの教訓」の中で、ブルース・スプリングスティーンが導入した新たなコンサートチケットの価格設定手法の波及効果について述べています。コンサートチケットからスニーカーの販売に至るまで、ダイナミックな値上げが「安いのがよりよい」という考え方を逆手にとって、買い手の注目と関心を集めた例は数多く存在します。

価格最適化のパワーを戦略的優位性に活用

Product lifecycle

Centric Pricing and Inventory は、多くの影響因子(スプレッドシートでは考慮しきれないほど膨大な)を取り込み、これらのデータをすべて活用し、あらゆる商品、あらゆる場所、あらゆるチャネルの価格設定ライフサイクル全体について、最適な価格設定を提案する機能を備えています。

ライフサイクルプライシング: 季節性商品の市場投入時に最適な価格の算出、および小売価格から値引き、プロモーションまで、商品のライフサイクル全体に沿った価格設定のプロセス。目的は売上の増加、そしてより多くの商品を正規価格に近い価格で販売することによる利益率の向上。

ダイナミックプライシング: ECの無限在庫、つまり終了期限のない商品により関連性が高く、あらゆるEC商品の価格変更をリアルタイムで自動化。目的は自動化による運転資金の改善と効率の向上。

コンペティティブプライシング 価値の高い主要商品に関連し、競合他社の動向に基づいて価格を調整。目的は、在庫削減と値引きの縮小。

Centric Pricing and Inventory は、使いやすく連携が容易なプラットフォームの活用が価格戦略の最適化、迅速な意思決定を実現します。